諏訪湖を取り囲み、都市と集落が発達している。
湖の南東には、湖が次第に埋め立てられて形成された沖積平野が広がる。河川沿いに自然堤防と呼ばれる微高地が発達し後背低地が生まれる。微高地に集落が発生し後背低地に耕作が営まれている。湖の北西は、周囲の山体から流出する急流河川が形成した扇状地が重なり合い、複合扇状地域を形成する。
諏訪湖南東沖積平野の地質概要
湖南東の沖積平野をとりまく盆地壁山体は、新生代の火成岩類により構成され、盆地床面は完新世河床堆積物(図1地質図fp)により広く覆われる。盆地壁山体基部には扇状地堆積物や崖錐性堆積土層(同図t・dt)が付着する。
湖南東の沖積平野は、河川沿いに発達する自然堤防と後背低地が組み合わされている。湖はかつて今より広く、静水面を埋め陸地が進出した模様である。
自然堤防は、周囲山体から流出する河川が運搬する砂礫・砂質系粗粒土を堆積させ、後背低地は低湿地に生成したマコモ・ヨシ等植物の遺骸と静水面に沈積したシルト・粘土等(細粒土)が堆積する。
盆地壁山体の基部に発達する扇状地・崖錐は、山体から供給される砂礫・土砂により構成されるがその分布は山麓部に限定され、盆地中央まで到達していない。
盆地内に堆積する土層は、およそ450mと言われている。盆地底の形状や到達深度は必ずしも明らかでなく、盆地内土層の構成や性状は一部が明らかになっているだけである。
盆地周囲の山体は、主には第三紀から第四紀にかけて活動した火成岩類が分布し、断層により急角度で盆地内に落ち込んでいる模様である。
新版長野県地質図ver.1(2010)では、諏訪盆地の地質断面図として縦断1断面(D)、横断3断面(B、H、L)を描いている(図2)。この中で、湖南沖積平野の東西方向断面を諏訪盆地H断面、L断面の2つの断面図で示している。
これによると、諏訪湖の南東岸に沿う(H)断面では、西岸に大きな逆断層が、東岸に盆地床面下に埋没する階段断層が描かれている(図4)。湖南沖積原の上流部の東西断面を示す(L)断面では、西と東に垂直に近い断層が描かれている(図5)。いずれも盆地東西の山体が急激に盆地内に落ち込み、沖積平野中央部では厚い軟弱土層が分布し盆地底基盤岩に到達していないことを示す。
湖岸に接する(H)断面では、腐植土層が少なくシルト・粘性土層が多い。上流の(L)断面では、10m余りの腐植土層の下位にシルト・粘性土を狭在し砂質土・砂礫層に移行する。
腐植土層の分布に着目すると、盆地縦断(D)断面に層厚10~20mないし30m程度の腐植土層が卓越分布することが分る。古宮川と東山山体に挟まれた広大な後背低地に生じた腐植土層と考えられる。
地質断面を示す関係資料を添付する。
- 図1 調査地周辺の地質図(長野県デジタル地質図2015「諏訪」)
- 図2 諏訪盆地地盤断面図(断面位置図)
- 図3 諏訪湖南東沖積平野縦断面図(位置図D断面の湖南東側)
- 図4 諏訪湖南東沖積平野諏訪湖畔横断面図(位置図H断面)
- 図5 諏訪湖南東沖積平野上流域横断図面(位置図L断面)