<絵図と地形>
北に永明寺山山体を描き、東に鬼場城・埴原田界・鬼場橋を記す。南に粟沢大界・横内大境往道・横内大境を記し、西に上原境と山神・一本松を描く。
図中央から下に集落と耕地を描く。集落内に明地家老屋敷・大年ノ宮・惣持院・観音堂・福寿院・観音堂・御蔵・薬師・御座石大明神が記される。
山麓に埴原田上汐が描かれこれより下が上川扇状地の平坦面に相当する。水路が巡らされ、田畑が営まれている。
矢ヶ崎村 家数 九拾八軒 外ニ寺一ヶ所
御城より弐里八町弐拾七間五尺 古寺前迄
元高 千弐拾石壱斗四升四合
高 千百四石八斗六合壱勺
物成 五百弐拾三石九斗壱升七勺八才
塚原村 家数 九拾四軒
御城より壱里三拾四町拾間五尺 宿中迄
<地質>
永明寺山山体が図幅上部に描かれる。図幅右下から下側全体に八ヶ岳火山台地が接近するが、ここには上川・柳川は描かれず鬼場橋と粟沢橋のみが記される。
永明寺山は、石英閃緑岩を主体に構成されている。白砂と呼ばれる風化砂や風化土砂が地表面を覆う。図中には「がうろ」「姫子石」と記される崩壊地が表わされる。山麓の緩斜面に墓処2ケ所・明地屋敷畑・御社宮神と山中に天白岩山・観音山・富士塚・齢松山と末端に鬼場城が描かれる。
鬼場に谷口を開く上川は、霧ヶ峰南麓と北部八ヶ岳西麓を流域に持つこの地域最大の河川である。柳川を合わせ諏訪盆地内に流入する。谷口からほぼ真西に流れる上川は、その左岸(南)を八ヶ岳火山台地に遮られ永明寺山の山麓に扇状地を形成する。扇状地は、途中の扇央部で盆地東壁山体に沿う横内断層により切られ盆地側が沈下している。従って、鬼場を扇頂部とする扇状地は、扇頂部から扇央部までが盆地床面から一段高い台地面として残り、矢ヶ崎村・塚原村の集落の生活面が形成された。
永明寺山の山麓では、山体からの崩積土砂の堆積が顕著である。過去の地質調査ボーリングでは、現在の運動公園連絡橋地点で上川河床礫層に永明寺山の風化砂(白砂)が載る事例もあり、山体の崩落土石が上川筋に達したこともあったと推定される。
上川の扇頂部から扇央部に連なる平坦面で実施された地質調査ボーリング結果を事例として2例掲げる。
〔No.1地点〕
最近塚原地区内の学校校舎棟建設地で実施された地質調査ボーリングデータである。調査は数ケ所で実施されているが、代表的な1孔のデータを示す。
GL~-0.45m シルト質砂、灰褐、中密に締る
~-2.60m 礫まじり有機質シルト、黒褐~暗褐、中軟~中硬に締る
~-2.70m ローム、橙褐、中硬、含水中、やや軟質な火山灰質粘土
~-8.00m 玉石砂礫、暗灰~灰褐、密、L=20cm以下の安山岩棒状~片状コア及び礫、マトリックスは少量の粘性土含有する細砂~粗砂主体、N≧50
表土下に薄いローム層を挟在する。
以深に玉石を交える扇状地砂礫層が連続する。
〔No.2地点〕
上川扇状地中央からやや扇頂部に寄った地点に於ける地質調査ボーリングデータである。
GL~-0.95m 表土・シルト
~-2.70m 玉石転石混じり土砂、暗灰褐~黄褐、玉石・転石挟在する、マトリックスは黄褐~暗褐の粗砂~細礫、密に締る、N≧60
~-15.15m 玉石混じり土砂、暗灰褐~暗黄褐~暗赤褐、礫の岩質は輝石安山岩・安山岩、N≧60
表土下に安山岩質の扇状地砂礫が連続しこれを15mまで確認した。