上桑原地区|諏訪盆地の集落と地盤

<絵図と地形>

 図幅下側に平坦部を流れる上川(赤沼川筋)と中門川(尻くさり川筋)が記され、図幅中央やや下に甲州街道(大道)が記される。中央より山側に街道に沿う集落・家屋・寺社および山林と城山・山神等が描かれる。
 甲州街道と赤沼川(上川)との間には田地が連なり、岩久保観音下の谷筋に集落・家屋が記され、大道下に突出する扇状地と白狐島に家屋が記される。田地は赤沼川の後背低地を拓いた水田である。集落は、東山から流出する沢の谷口に形成された扇状地面に発達する。
 家屋は、下筋側から竹津久保(武津か?)、細久保が子ノ神と共に描かれる。岩久保観音下の沢筋(現在の赤津川か?)には此久保畑・山神・ミシャクジ・万福寺と家屋が記されている。これは現在の普門寺を指すと思われる。
 足長明神・城山を挟みその南に開敷院・御社宮寺・仏法寺を擁す集落部が描かれる。城山背後から流出する沢筋とその谷口の扇状地面に展開する集落であることが分る。
 大道(甲州街道)は、石橋が3基(内一つは馬橋と添書き)記され、重交通が可能な主要道であることを示す。
 竹津久保、細久保川、赤津川、髙橋川・ベッサワ川の谷口扇状地を連ねる大道(街道)に沿い発達した山麓集落である。

上桑原村  家数 百八拾四軒 外ニ寺三ヶ所 御徒以上之家壱軒
      御城より壱里三町五尺 上桑原村前沢辻迄
     元高 千百拾六石
      高  千弐百九拾九石六斗六升八合六勺
         物成 八百弐拾三石弐斗六升七合弐勺六才

<地質>

 この地域で実施した地質調査のボーリング柱状図を示す。

〔No.1地点〕
 諏訪盆地東壁山体から赤津川が流出し扇状地を形成している。
 第三紀の花崗岩質深成岩と安山岩系霧ヶ峰火山噴出物から成る山体を侵食する赤津川は、昭和47年に発生した土石流と同様な災害を繰り返し生じていると考えられる。
 赤津川谷口に立地する四賀保育園(標高765.85m)の地質調査ボーリングでは、山体から供給された粘性土混り砂礫(玉石砂礫)を検出している。
 GL~-1.65m 腐植土、上部は耕作土、軟、含有水量極大
  ~-3.10m 安山岩質砂礫、粘性土を多く含む、含有水量大
  ~-3.55m 有機質土混り砂礫、含有水量大
  ~-6.00m 粘性土混り砂礫
  ~-11.90m 粘性土混り砂礫、N>40
  ~-13.35m 砂礫、安山岩質・花崗岩質礫、採取コア最大105mm、含有水量極大、N≧50
  ~-20.14m 粘性土混り砂礫、中密から密に締る、N>30
 現在の盆地床面(約761.5m)下に扇状地砂礫が連続していることが分る。

〔No.2地点〕
 旧諏訪警察署敷地内送電線鉄塔地点の地質調査ボーリングデータである。
 GL~-3.40m 礫交り土砂、礫混りシルト質砂、盛土
  ~-10.60m 腐植土、極軟~軟、N=4・3・5・3・2・3・3
  ~-12.70m 有機質土混り細砂、ゆるい、N=11・4
  ~-15.80m 砂質シルト、軟、N=9・6・5
  ~-19.30m シルト・細砂の互層、ゆるい~軟、N=24・13・13
  ~-20.40m 高有機質シルト、硬、N=20
  ~-22.95m 微細砂、密、N=47・50・38
  ~-25.75m シルト・細砂の互層、N=12・15・25
  ~-27.40m 砂礫、粗砂主体、小礫・シルト含有、N=24・21
  ~-32.70m 砂混りシルト(高有機質)、硬、N=25・27・25・24・29
  ~-35.45m 砂、小礫・浮石混入、密、N=50・36・34
  ~-39.40m 砂質シルト・細砂の互層、中密~硬、N=21・20・27・31
  ~-40.05m 砂礫、密、N≧50

 地表面下3.40mまで人工の盛土層が置かれる。以深約10mまでの腐植土層は、極めて軟い。GL-20.40mまでの高有機質シルトは、硬く締る。
 GL-20.40m以深に砂層が現われ、以深に腐植シルトとの互層が続く。